大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和43年(ネ)1882号 判決

控訴人

株式会社小西組

控訴人

山形実郎

外二名

右四名代理人

野沢涓

控訴人

栗林義男

右五名代理人

米田軍平

被控訴人

摂津信用金庫

右代理人

高橋靖夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

ただし、原判決末尾添付目録中「215.61平方メートル」とあるを「125.61平方メートル」に更正する。

事実〈省略〉

理由

当裁判所は、次につけ加えるほか、原判決と同じ理由で、控訴人らの主張を排斥し、被控訴人の本訴請求を理由があるものと判断するので、原判決の理由(ただし、株式会社前沢商工に関する部分を除く。)を、ここに引用する。

代物弁済の予約が債権担保のためのものであり、したがつて債権者が予約完結後に清算義務を負う場合においても、右の清算的解決をするためには目的物を換価処分する以外に方法がなく、その前提として本登記手続を経由する必要があることは当然で、そのため控訴人らに対して右本登記手続をなすについての承諾を求め得ることもまた当然のところである。

そして本件のように、代物弁済の予約とともに同一不動産につき併用担保としての抵当権の設定がなされているときでも、これを異別に取扱う理由はないものと考えられる。なぜならば、かかる場合債権者が債権の満足をはかるために抵当権実行の方法によるか、代物弁済の予約完結権行使の方法によるかは、その自由な選択に委ねられているものというべく、たとえ担保不動産の価額が被担保債権額を超え、債権者において抵当権実行の方法をとるにおいては、後順位の担保権を有する第三者が配当加入その他の方法によつてその差額のうちから自己の債権額の全部又は一部の弁済をうけ得る関係にあるとしても、債権者はこのような後順位担保権者のために、右の選択権の行使を制限され、抵当権実行の方法によらねばならないものと解すべき道理は何もないからである。けだし、債権者が抵当権の設定と同時に代物弁済の予約を併用する目的は、その債権の弁済期が到来した場合、右併用担保権のいずれかを選択行使することによつてできるだけ簡易かつ迅速に債権の満足をはからんとするにあるものといつてよく、もし後順位の担保権の設定をした第三者によつて代物弁済予約完結権の行使の結果が妨げられるとしたら、右併用担保権はその本来の効用を失うことになるのであつて、その不当たるや明かであろう。

もつとも、本件のような清算型の代物弁済予約においては、債権者は結局目的物を換価処分して債権額超過部分は債権者に返還しなければならないのであるから、右代物弁済予約の完結による本登記を経由する以前に後順位担保権者から担保権の実行としての競売申立等がなされた場合には右の申立によつて開始された競売手に加入して抵当権者として優先弁済をうけることによつて債権の満足が得られるかぎり、その方法によるべきであり、これを超えて、第三者の執行を排除してまで代物弁済予約上の権利を行使することを許す必要はないものというべきであるが、本件において控訴人らから右の如き担保権の行使がなされたことについては何らの主張立証がない。

したがつて、被控訴人の控訴人に対する本訴請求を認容した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、本件控訴を棄却し、控訴費用は敗訴の当事者である控訴人らの負担とし、原判決主文第一項掲記の「目録」として原判決書の末尾に添付された「目録」中、当判決主文第三項掲記のような明白な誤謬のあることを発見したのでこれを更正することとして、主文のように判決する。

(小石寿夫 宮崎福二 館忠彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例